コーパイの進藤君(第3話)

コーパイの進藤君第3話です。
第二話をまだ読んでない方は、こちらからどうぞ。
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「……待ってて……もらえませんか?」
「何を?」
「俺がキャプテンになるまで」

何を口走ったんだ、俺(小泉孝太郎)!!
「あなた、私をいくつだと思ってるの!?」と言って席を立ってしまった藤井さん(松嶋菜々子)は明らかに、怒・っ・て・い・た。
 あれから3か月。予想はしていたけれど俺の機長昇格訓練の出来は芳しくなく(by教官)、あれ以来フライトで藤井さんと一緒になることもなかった。
 明日はクリスマスイヴ。藤井さんはあの男(トニー・レオン)と一緒に過ごすのだろうか……。

「進藤。探しちゃったじゃん。社員食堂でなに黄昏てんのー?」
 同期のコーパイ、宮澤(塚本高史)だった。ノリもフットワークも軽く、社内で<特にCAに>顔が広い。

「どうよ? 昇格訓練は。いいよなあナナロク[B767]は。トリプル[B777]なんて上がつかえててさ。コーパイのまま50んなっちゃうっつーの」
「よくねえよ。今月のライン教官なんか、諸星キャプテン(井原剛志)だよ」
「あちゃー、そりゃキツいね。航大出のキャプテンは自社養成にキビし過ぎだよな。それよりおまえ、藤井さんとはどうよ?」
「なんでおまえがそんなこと知ってるんだよ!!!」
「ん~。智恵(佐藤江梨子)に聞いた♪ 気を付けろよ、CAの情報網はすっげーよ?」
「まだ切れてなかったのかよ。おまえカミさん大事にしろって」

 宮澤は地上研修時代に知り合ったKD[地上職員]の彩香(加藤あい)と早々に結婚して子供もいたが、女グセの悪さは昔から変わらず、「俺、MBA(Married But Available)だから♪」が口グセだった。

「そんなお前に夢のようなオファーがあるんだけど」
「宮澤のオファーなんて悪夢そのものだよ」
「明日からの成田-ホーチミン、庄司(森田剛)がオルタを探してんだけど、お前行かない?」
 
同期の庄司は俺と同じ機種だが、俺より宮澤とウマが合うようで、いまだによくつるんでいた。

「なんでそれが夢のようなオファーだよ。冬のホーチミンなんて横風強くて大変なんだよ。だいたい庄司はなんで飛ばないの?」
「なぜなら俺と一緒に読モちゃん達との合コンに参加するからだ♪」
「は!?」
「まあ待てって。同期思いの俺はクルーの編成表をハックしてきた。これを見ろ」

 明日。クリスマスイヴから2泊3日の成田-ホーチミン、759便。成田の予報は雪。
CD(アシスタントパーサー)は藤井さんだった。

旧ぱたのうちの投稿より