コーパイの進藤君スピンオフ・・かな?

コーパイの進藤君と同じ作者さんの作品と思われるお話です。
進藤君のスピンオフに入れていいのかどうかわからなかったのですが、せっかくなので保存のため掲載します。
これが「コーパイの進藤君」シリーズで私の持っている最後の文章となります。
もし、幻の第一話やその他のお話などお持ちの方がいらっしゃれば、お知らせください。

では、どうぞお楽しみください。

玉すだれ上等 – 14/8/25(月) 16:43 –

 JR飯田橋駅を出て坂をのぼる。1階居酒屋が入る古いビルにはエレベーターがなく、そろそろお彼岸という時期なのに私(夏川結衣)の背中に汗が伝った。
 ビルの4階には「オフィスDEN」とそっけない表札。
 私がこの編集プロダクションから校正の仕事をもらって1年近くになる。今どき紙で初校や再校をチェックする媒体は少ないが、何の資格も技術もない私にはありがたい仕事だった。

「あ、及川さん、どうも」
古いタイプのインターホンを押すと、社長(リリー・フランキー)自らドアを開けてくれた。なんのことはない、編集プロダクションと言っても、この社長と編集者が一人いるだけの孫請け事務所なのだ。
「わざわざすいませんね、こんな暑い日に。俺か白坂(えなりかずき)が取りに行ければ良かったんだけど」
「いえ、とんでもないです。村木さんもお忙しいでしょう。こちら、本日の初校戻しと、これ、つまらないものですけど白坂さんと召し上がってください」
「あれ、こりゃすみません。いつも悪いなあ。たいしたギャラもお出しできないのに」

 村木は私が差し出したお煎餅を本当にうれしそうに受け取った。
大学時代の友人に紹介してもらった村木は、たぶん私より5つか6つ年上で、昔は大手の出版社でベストセラーを何冊も出したやり手の編集者だったと聞いた。
 無精ひげとジーンズ、おそらくネクタイなんて何年もしたことがないだろう。原稿や資料が山のように積み上がった汚いデスクの奥には、灰皿の上で小山を作った吸殻がこぼれ落ちそうだった。
都市銀行に勤める夫(松重豊)とは正反対のタイプ。結婚しているのだろうか……。

「ほら、俺こんなでしょう」
そんなことをぼんやり考えていると急に村木が言った。
「ずっと前に奥さんと別れちゃってから、毎日こんなで」
「そうなんですか」
「そうそう、そうなんです。毎日版元の人間と白坂くらいしか話す人いないでしょう。なんか及川さんみたいなきれいなヒトが来ると緊張しちゃって」
「そんな……。私の方こそ村木さんみたいな楽しい方とお話できる機会はめったにありませんから」
「ははは。楽しいでしょう。旦那さんはみずほ銀行にお勤めでしたっけ? すげえな、エリートですよね」
「うーん、そうなんでしょうね。ほとんどね、会話なんてないんです。主人とは」
「ありゃりゃ、そりゃいかんですね。言葉に詰まるようじゃ恋も終わりって、サザンもね」
「あはは、ほんとですね。やっぱり村木さん、楽しいですね」
「俺、こんなにショボいでしょう」
「いえ、そんな……」
「外見がショボイいのに、中身までショボかったらヒサンだなって思いましてね。これでもがんばってルンですよ。特に美人の前では。ははは」

 そう言った村木のテレ隠しのような笑顔は意外にも可愛らしくて、私は少し喉元が火照るのを感じた。
 
「及川さん、もう帰らなきゃアレですかね?」
「え?」
「いや、晩御飯の支度とかあるのかなって」
「いえ、主人はいつも遅いので私ひとりなんです」
「そっかー」
「何か?」
「いや、やっぱマズいですかね? ご飯とか誘ったら」

…………………
私(夏川結衣←※妄想)、断れないなあ!!

旧ぱたのうち、コーパイの進藤君まとめスレッド 玉すだれ上等さん – 14/8/25(月) 16:43 -の投稿 より