コーパイの進藤君(第2話)

「ぱたのうちで心に残った投稿3選」で書いた伝説の名作「コーパイの進藤君」の第2話です。
このまま埋もれさせてしまうには、あまりにももったいないので、私の所にある回を投稿します。
第一話は、どうしても見つかりませんでした。もしお持ちの方がいたらお知らせください。

10年以上前に投稿されたものですので、配役などがかなり懐かしい感じになっています。
それでは、どうぞ。

「家庭を壊すことはできない。でも、愛してるのは君だよ」と言い残して
 香港へ帰ってしまったアレックス(トニー・レオン)のことをぼんやり考えながら、
 私(松嶋菜々子)はステイ先のホテルのティールームで冷めたジャスミンティーを啜っていた。

 「信じられない!私よりお給料が少ないのよ!?」と文句を言いながら年下の整備士(山田孝之)と昨年結婚した
  同期の佳織(黒谷由香)は、なんだかんだ言いながら幸せそうだ。
 今の生活には満足している。でも、来年40……。このまま一生、アレックスの愛人でいる覚悟が私にはできるだろうか……。

 「藤井さん、おひとりですか?」

声をかけてきたのは、今回のフライトで一緒だったコーパイの進藤君(小泉孝太郎)だった。
父親が国土交通省の官僚でコネ入社したとのもっぱらの噂だが、嫌味のないハンサムで若いCAには人気があった。

「あら、林キャプテン(豊浦功輔)たちとゴルフに行ったんじゃなかったの?」
「実はゴルフ苦手なんです。そうは見えないでしょ?」

いかにも育ちが良さそうな笑顔。同じ路線を担当しているせいか彼とはなぜか一緒のパターンになることが多かったが、私はさわやかなだけのこの好青年が苦手だった。

「……藤井さん、昨日の人……彼氏、ですか? けっこう年上……ですよね?」
「それについて何か答えなきゃいけないわけ?」
「……いえ」

 立ち去る気配がない彼に、私はだんだんイライラしてきた。

「他に何か? お茶を飲むなら何かオーダーしたら?」
「俺……、いや自分、来月から機長昇格訓練に入るんです」
「そうなの? 経営合理化で昇格訓練は止まってるのかと思ってた。良かったじゃない。頑張ってね」
「藤井さん……」
「何?」
「……待ってて……もらえませんか?」
「何を?」
「俺がキャプテンになるまで」

旧ぱたのうちの投稿より